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VIX ETF 5種、市場心理を利用した投資方法

VIX ETF
ETF ショッパー

VIX ETFのように、市場心理を利用した投資法を確認してみましょう。

投資の世界では、市場心理が株価の動きを左右する重要な要因となっています。その市場心理を数値化したものが「VIX指数」、別名「恐怖指数」です。

昨今、市場の楽観論が広がる中、この指標は記録的な低水準を示しています。このようなタイミングだからこそ、VIXとその関連ETFを理解することが、賢明な投資家にとって価値ある知識となるでしょう。

VIX指数とは?市場の恐怖心を数値化する指標

VIX指数(Volatility Index)は、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が開発した指標で、市場参加者の不安心理を数値化したものです。この指数は、S&P500指数オプションの暗黙のボラティリティ(変動性)を測定し、今後30日間の市場変動予測を表します。VIX指数が高いほど市場の不安定性が高まり、低いほど投資家心理が安定していることを示します。

初心者
初心者

VIX指数って、単なる数字なの?

ショッパー
ショッパー

いいえ、市場参加者の不安や恐怖を数値化したものなんです。

VIX指数が30を超えたら市場はかなり不安定、15以下なら楽観的すぎるかも。今はちょうど12台だから、ちょっと警戒が必要かもしれませんね。

VIX指数の理解に重要なのは、株式市場との逆相関関係です。

つまり、株価が急落すると、VIX指数は急上昇する傾向があります。2008年の金融危機時には70ポイント以上、2020年のコロナショック時には80ポイント以上まで上昇しました。対照的に、現在のVIX指数は約12ポイント台と歴史的低水準にあり、市場の過度な楽観主義を示唆しています。

VIX指数の読み方
一般的に、VIX指数の値は以下のように解釈されます:

  • 20以下:市場の安定期、楽観的な投資家心理
  • 20〜30:やや不安定な市場環境
  • 30以上:高い市場不安、パニック状態の可能性
  • 40以上:極度の市場パニック、危機的状況

VIX指数を理解する上で重要なのは、一時的な値よりも、その変化率に注目することです。例えば、VIX指数が10から15へ上昇した場合、50%の上昇となり、市場心理の急激な変化を示しています。このような変化は、株式市場の転換点を示す可能性があります。

実際の投資に応用する場合、多くのプロ投資家は「VIXが高すぎるときに株を買い、低すぎるときに慎重になる」という戦略を採用しています。歴史的に見ると、VIXが30を超えたタイミングで株式を購入した投資家は、その後6〜12ヶ月で平均15〜20%のリターンを得ています。一方、VIXが15を下回るような現在の状況では、市場の自己満足に警戒が必要かもしれません。😮

注意点
  • VIX指数は市場の恐怖心を数値化し、株式市場と逆相関の関係にある
  • VIX指数の値より変化率に注目することで、市場転換点を予測できる可能性がある

主要なVIX ETFの特徴と運用実績比較

VIX指数に連動して投資できるETF(上場投資信託)には様々な種類があります。これらのETFは、VIX指数そのものではなく、VIX先物契約に投資することで指数の動きを追跡しようとしています。

VIX指数とは

ここでは、主要なVIX ETFの特徴と過去のパフォーマンスを詳しく見ていきましょう。

初心者
初心者

VXXの過去5年間のパフォーマンスが-97%って聞いて驚いたわ…

ショッパー
ショッパー

そうなんです。VIX ETFは長期保有に向かないんですよ。コンタンゴという先物市場の特性で価値が侵食されていくんです。短期的な市場ヘッジとして使うのが正解ですね。

VXX: iPath Series B S&P 500 VIX短期先物ETN

2018年に設立されたVXXは、バークレイズが発行するETN(上場投資証券)で、S&P 500 VIX短期先物指数に連動しています。短期先物契約は価格変動が大きいため、市場のボラティリティ急上昇時に大きなリターンが期待できます。

しかし、投資家が注意すべき重要な点があります。過去5年間のVXXの運用実績は**約-97%**と著しく低迷しています。これは、VIX指数自体の-18.96%と比較すると極めて大きな下落です。この大幅なパフォーマンス差は、「コンタンゴ」と呼ばれる現象によるものです。

コンタンゴ問題とは
VIX先物市場では、通常、遠い将来の契約ほど価格が高くなる「コンタンゴ」状態にあります。VXXのような短期先物ETFは、満期が近づく契約を売却し、より長期の契約を購入する「ロールオーバー」を繰り返します。このプロセスで継続的な損失が発生し、長期的な資産価値の侵食につながります。この現象は「ロールイールド」とも呼ばれ、長期保有時の最大の問題点です。

また、VXXの経費率は0.89%と比較的高く、長期投資には向いていないことを示しています。一般的に、VXXは数日から数週間の短期的な市場動向に対するヘッジ手段として使用されるべきでしょう。🕒

VIXY: ProShares VIX短期先物ETF

VIXYはProSharesが運用するETFで、VXXと同様にS&P 500 VIX短期先物指数に連動しています。経費率は0.85%とVXXよりわずかに低いものの、パフォーマンスパターンはほぼ同一です。

2020年3月のコロナショック時には約300%の急上昇を記録しましたが、そのような急騰は非常に珍しいケースです。その後の市場安定期には、VIXYは持続的な価値低下を示しています。特に平常時の市場環境では、ほぼ確実に価値が減少する点を理解しておく必要があります。

VIXM: ProShares VIX中期先物ETF

VIXMは、中期(4〜7か月)のVIX先物契約に投資するETFです。短期先物ETFと比較して、ボラティリティが低く、価値の侵食も緩やかな傾向があります。過去5年間のパフォーマンスは約-34%で、VXXやVIXYよりも優れています。

中期先物契約はコンタンゴの影響を受けにくいため、長期的なヘッジ手段として短期先物ETFよりも適している場合があります。経費率は0.87%です。市場の不確実性が高まる時期に、ポートフォリオの一部(5〜10%程度)をVIXMに配分する戦略が、リスク管理の観点から効果的かもしれません。

VXZ: iPath Series B S&P 500 VIX中期先物ETN
VXZはバークレイズが発行するETNで、VIXMと同様に中期先物契約に投資します。過去のパフォーマンスはVIXMとほぼ同等で、経費率は0.89%です。ETNとETFの主な違いは、ETNが発行体の信用リスクを伴うことですが、バークレイズのような大手金融機関が発行する場合、このリスクは比較的小さいと考えられます。

VXZの取引量はVIXMよりも少なく、流動性が低い点には注意が必要です。市場変動が予想される際の中長期的なヘッジ手段として検討できるでしょう。

VMAX: Hartford US Value ETF

VMAXは他のVIX ETFとは異なり、直接VIX先物に投資するのではなく、バリュー株に重点を置きながら市場ボラティリティに対応するよう設計されています。経費率は0.60%と比較的低く、長期投資にも適しています。

過去3年間のパフォーマンスは約+15%で、伝統的なVIX ETFとは対照的に資産価値の成長を示しています。しかし、VIX指数との連動性は低く、純粋な市場ボラティリティに対するヘッジ手段というよりは、バリュー投資戦略として位置づけられるでしょう。📈

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日本市場で取引可能なVIX関連商品

日本の投資家にとっては、国内で取引できるVIX関連商品を理解することが重要です。

東京証券取引所や日本の証券会社を通じて投資可能なVIX関連商品には以下のようなものがあります。

初心者
初心者

日本でもVIX ETFに投資できるの?

ショッパー
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直接的なVIX ETFは東証に上場していないんだけど、野村の日経VI先物連動型ETFがあるよ。

あるいは、海外証券口座を開設すれば、本家のVIX ETFに投資することもできるよ。ただし、為替リスクには注意が必要だね。

東証上場のVIX関連ETF/ETN

残念ながら、現在日本の証券取引所に直接上場しているVIX専用のETFはありません。しかし、日本の投資家は他の方法でVIX関連商品に投資することが可能です。

まず、野村アセットマネジメントが提供する「野村NEXT FUNDS日経平均VI先物指数連動型上場投信(1570)」があります。これは日本版VIX指数ともいえる日経平均ボラティリティ・インデックスの先物に連動するETFです。日経平均株価のオプション価格から算出されるこの指数は、日本市場の恐怖指数として機能します。

日経VI指数とVIX指数の違い
日経VI指数とVIX指数は計算方法が類似していますが、対象市場が異なります。日経VI指数は日経平均株価オプションを基に算出され、日本市場の心理を反映します。一方、VIX指数はS&P500オプションを基に算出され、米国市場の心理を反映します。日本市場と米国市場は高い相関性を持ちますが、必ずしも同一のパターンを示すわけではありません。地政学的リスクや国内政策への反応が異なることがあります。

野村NEXT FUNDS日経VI先物指数連動型ETFも、他のVIX ETFと同様に長期保有には向いていません。過去5年間のパフォーマンスは約-80%で、短期的な市場変動に対するヘッジとして使用すべきでしょう。経費率は0.66%です。🔄

海外VIX ETFへのアクセス方法
日本の投資家が米国上場のVIX ETFに投資するには、主に以下の方法があります:

  1. 海外証券口座の開設:インタラクティブ・ブローカーズやサクソバンクなどの海外証券会社で口座を開設し、直接米国ETFを購入する方法です。為替手数料や取引手数料が比較的低く、最も直接的なアクセス方法です。
  2. 国内証券会社の海外株式取引サービス:SBI証券、楽天証券、マネックス証券などは、米国株の取引サービスを提供しています。これらのサービスを通じて、VXX、VIXY、VIXMなどの主要VIX ETFに投資可能です。手数料は海外証券会社より高い傾向がありますが、日本語サポートが充実しています。
  3. CFD(差金決済取引):一部のCFDブローカーは、VIX指数やVIX ETFを対象としたCFD取引を提供しています。レバレッジを活用できる一方、スプレッドコストや金利調整があることに注意が必要です。

海外のVIX ETFに投資する際は、為替リスクを考慮する必要があります。ドル円相場の変動が投資リターンに大きな影響を与えることがあります。また、海外ETFからの配当には一般的に10〜30%の源泉税が課されますが、VIX ETFのほとんどは配当を出さないため、この点は問題になりにくいでしょう。

参考資料
  • 日本では野村NEXT FUNDS日経VI先物指数連動型ETF(1570)が国内VIX関連商品として利用可能
  • 海外VIX ETFへのアクセスには為替リスクを考慮する必要がある

市場心理を活用したVIX ETF投資戦略

VIX ETFを投資ポートフォリオに効果的に組み込むには、市場心理の理解と明確な戦略が必要です。以下に、実践的なVIX ETF投資戦略をいくつか紹介します。

ポートフォリオヘッジとしての活用
VIX ETFの最も一般的な使用方法は、株式ポートフォリオに対するヘッジです。市場が安定し、VIX指数が低水準(15以下)にある時期に、ポートフォリオの5〜10%程度をVIX ETFに配分することで、将来の市場混乱時に保険として機能させる戦略です。

例えば、1000万円の株式ポートフォリオを持つ投資家が50万円(5%)をVIXMに配分した場合、市場が20%下落するシナリオでは、VIXMが100%上昇すると仮定すると、株式の損失200万円に対してVIXMで50万円のゲインとなり、ポートフォリオ全体の損失を15%に抑えることができます。

VIX ETFのヘッジ効率

VIX ETFのヘッジ効率は完全ではありません。歴史的データによると、S&P500が1%下落した場合、VIX指数は平均して約3〜4%上昇します。しかし、VIX ETFは先物契約を通じて間接的に連動するため、この関係性は希薄化します。一般的に、効果的なヘッジには株式ポートフォリオの7〜15%程度のVIX ETF配分が必要とされています。

ただし、長期的なヘッジとしてVIX ETFを保有する場合は、価値の侵食が避けられないため、定期的な見直しと再調整が必要です。市場の安定期が続く場合、ヘッジコストは徐々に増加します。🛡️

市場センチメント指標としての活用
VIX指数とVIX ETFの値動きは、市場センチメントの優れた指標となります。多くのプロトレーダーは、極端な値(非常に高いまたは非常に低い)をコントラリアン(逆張り)指標として活用しています。

具体的には、以下のような基準を参考にできます:

  1. 買いシグナル:VIX指数が30以上に上昇し、VIXY/VXXなどが短期間で50%以上上昇した場合、市場が過度に悲観的になっている可能性があります。この時、株式の買い増しを検討する良いタイミングかもしれません。
  2. 売りシグナル:VIX指数が12以下に低下し、市場の自己満足が広がっている場合、株式のリスク管理を強化するタイミングかもしれません。ポートフォリオの一部売却や、防御的な資産への再配分を検討する時期です。

例えば、2020年3月のコロナショック時にVIX指数が80を超えた際、多くの投資家が恐怖に駆られて売却を続けましたが、この時点で冷静に株式を購入した投資家は、その後12ヶ月で40%以上のリターンを得ることができました。一方、現在のようにVIX指数が12前後の状況では、市場が過度に楽観的になっている可能性があります。

  • VIX ETFは株式ポートフォリオの5〜10%程度を配分するヘッジ手段として有効
  • VIX指数が30以上で株式買い増し、12以下で慎重姿勢を検討するのが一般的な戦略

短期トレーディング戦略

VIX ETFは、その特性から短期トレーディングに適した商品です。特に市場が不安定な時期には、以下のような戦略が考えられます:

  1. モメンタムトレーディング:VIX指数が急上昇し始めた初期段階でVXXやVIXYに投資し、上昇モメンタムに乗る戦略です。ただし、明確な利益確定ルール(例:20%上昇で半分売却)を設定することが重要です。
  2. 平均回帰トレード:VIX指数が過去20日間の移動平均から大きく乖離した場合(例:+30%以上)、やがて平均に戻るという原理を利用した戦略です。VIX指数が急騰後、初期の調整段階でVIX ETFを空売りする方法などがあります。
  3. カレンダースプレッド:短期先物ETF(VXX)と中期先物ETF(VIXM)の組み合わせを利用する高度な戦略です。市場混乱時には短期先物の上昇率が高く、安定期には中期先物の下落率が小さいという特性を活用します。

短期トレーディングは高度なスキルとリスク管理が必要なため、経験豊富な投資家向けです。初心者は少額から始め、経験を積むことをお勧めします。

結論

VIX指数と関連ETFは、市場心理を理解し、それを投資戦略に活用するための貴重なツールです。特に現在のような市場の楽観ムードが強い時期には、VIX指数の動向に注目することで、潜在的なリスクを事前に察知できる可能性があります。

もちろん、このような曖昧な時期にSGOV、BILのように短期債券で回避する人もいます。 (代表的に私)
もし、自分で心理をよく理解していると思うなら、VIX ETFも狙ってみてください。ただ、個人的には一口勝負はお勧めしません。

Summary
✅ VIX指数は市場恐怖心の重要な指標であり、現在の低水準(12ポイント台)は過度な市場楽観論を示唆している
✅ VIX ETFは先物契約のコンタンゴ問題により長期保有に向かず、短期的な市場ヘッジまたはトレーディング手段として活用すべき
✅ 日本の投資家は海外証券口座または国内証券会社の海外株式取引サービスを通じてVIX ETFにアクセス可能

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受動的収入の構築を目指すための包括的ガイド『私は年間129回の配当金を受け取る』の著者。
現在は年間約250万円の配当収入を得ながら、インカム重視の投資戦略を発信・ナビゲート中。
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