イオン株はなぜ下がった?高値から半値、優待株の利回りを計算し直す【2026年】
イオンのレジで「オーナーズカード」を出す人を見かけると、この株の人気ぶりを実感します。買い物のたびに数%が戻ってくる株主優待は、日本でもっとも知られた優待のひとつでしょう。
その人気株が、いま静かに売られています。2025年11月27日に2,877円だった株価は、2026年9月25日には1,300円。高値から54.8%の下落です。日経平均が年初来で3割上がった年に、イオンは半分近く下げました。
「優待があるから大丈夫」と思って持っていた人ほど、この下げは気になるはずです。イオン株に何が起きたのか、そして今の株価で優待と配当を合わせた利回りはどのくらいなのか。数字で確かめていきます。
イオンの株価は高値から半値になった
まず値動きを月ごとに追います。2025年9月1日に1株を3株にする株式分割があったので、以下はすべて分割後の株価にそろえています。
| 時点 | 株価(分割後) | できごと |
|---|---|---|
| 2025年8月末 | 1,787円 | 分割の基準日(8月31日) |
| 2025年11月27日 | 2,877円 | 上場来高値 |
| 2025年12月末 | 2,477円 | - |
| 2026年4月9日 | 1,800円 | 決算発表を受け、1日で-8.2% |
| 2026年9月25日 | 1,300円 | 高値から-54.8% |
分割の直後、株価は2カ月で6割上がりました。分割で最低投資額が3分の1になり、100株から優待が受けられるようになったことで、個人投資家の買いが一気に入ったと見られます。
ただ、その上げ幅は業績が3カ月で6割良くなったという意味ではありません。ここが後で効いてきます。
同じ小売でも、イオンだけが大きく下げた
| 銘柄 | 年初来 | 1年 | 5年 |
|---|---|---|---|
| イオン(8267) | -47.5% | -28.6% | +29.4% |
| パン・パシフィック・インターナショナルHD(7532) | -23.6% | -27.7% | +78.5% |
| セブン&アイ・ホールディングス(3382) | -10.9% | -0.4% | +15.7% |
| J.フロント リテイリング(3086) | +23.4% | +8.0% | +161.2% |
| 高島屋(8233) | +30.1% | +25.9% | +259.1% |
| 日経平均 | +31.8% | +45.0% | +119.4% |
百貨店の高島屋やJ.フロントは年初来で2〜3割上がっています。訪日客の買い物が追い風になった業態です。一方、スーパーやディスカウントストアは軒並み弱く、その中でもイオンの下げ幅は群を抜いています。「小売株が売られた」のではなく「イオンが売られた」と考えたほうが実態に近いでしょう。

イオン株が下がった3つの理由
理由①:業績は最高益。それでも「期待には届かなかった」
意外かもしれませんが、イオンの業績は悪くありません。2026年2月期は営業収益が初めて10兆円を超え、営業利益も過去最高でした。
| 決算期 | 営業収益 | 営業利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 10兆1,349億円 | 2,377億円 | 272億円 |
| 2026年2月期 | 10兆7,153億円 | 2,704億円 | 727億円 |
| 2027年2月期(会社予想) | 12兆円 | 3,400億円(+26%) | 730億円(+0.4%) |
問題は今期の予想です。営業利益は+26%の3,400億円と大幅増益なのに、純利益は+0.4%の730億円でほぼ横ばい。決算発表を受けて、株価は1日で8.2%下げました。日本経済新聞も「予想平均を下回った」と報じています。
営業利益が増えるのに純利益が増えないのは、イオンが多くの上場子会社を抱えるグループだからです。子会社が稼いだ利益の一部は、その子会社の少数株主のものになります。ドラッグストアや金融、モール開発といった子会社の好調は「営業利益」には全部乗りますが、「純利益」には一部しか届きません。株主が受け取れるのは純利益のほうです。
理由②:PERが100倍を超えていた
高値の2,877円は、どのくらい「高かった」のでしょうか。2026年2月期の1株利益は約27円(会社が開示した配当性向から逆算)。これで割ると、高値時点のPERは100倍を超えていました。
日本株全体のPERはおおむね15〜20倍です。スーパーという成熟した業態で、その5倍以上の評価を受けていたことになります。利益が横ばいなら、この評価が縮んでいくのは自然な流れでした。いま1,300円でもPERは48倍ほどで、なお市場平均の3倍です。
理由③:優待目当ての買いが、先に来すぎた
分割で「13万円で優待がもらえる株」になったことで、分割直後に買いが集中しました。しかし優待の魅力は毎年同じで、株価が上がるほど利回りは薄まります。優待が支えるのは「その株を売らない理由」であって、「株価が上がり続ける理由」ではありません。2月末の権利確定を過ぎて売りが出ると、支えは細くなりました。
この構図は、先日書いた任天堂の株価が半値になった記事とよく似ています。売上や営業利益といった「見出しの数字」が良くても、株主に届く利益と株価の水準がかみ合わなければ、株は下がります。
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配当は減ったのか?分割後の配当を正しく読む
分割をはさむと配当の数字が読みにくくなります。イオンの配当ページと決算短信をもとに、分割後の1株あたりにそろえて並べます。
| 決算期 | 中間 | 期末 | 年間(分割後換算) |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 20円(分割前) | 20円(分割前) | 約13.3円(記念配当含む) |
| 2026年2月期 | 20円(分割前) | 7円 | 約13.7円 |
| 2027年2月期(予想) | 7.5円 | 7.5円 | 15円(うち記念配当1円) |
つまり配当は減っていません。むしろ普通配当は年14円に増え、記念配当1円が上乗せされる予想です。イオンは「1株あたりの年間配当は前年以上を維持する」ことを方針に掲げています。
ただし配当利回りは、1,300円の株価でも1.15%(15円÷1,300円)にとどまります。配当だけを目的にする株ではありません。イオン株の価値は、配当と優待を合わせて考えたときに初めて見えてきます。
株主優待「オーナーズカード」の利回りを計算し直す
オーナーズカードは、イオンやマックスバリュなどでの買い物金額の一部が半年ごとに現金で戻ってくる優待です。分割にあわせて区分が変わり、2026年2月末の権利確定分から次の返金率になりました。
| 保有株数 | 返金率 | 必要な投資額(1,300円で計算) |
|---|---|---|
| 100株 | 1% | 13万円 |
| 200株 | 2% | 26万円 |
| 300株 | 3% | 39万円 |
| 1,500株 | 4% | 195万円 |
| 3,000株 | 5% | 390万円 |
| 9,000株 | 7% | 1,170万円 |
優待の価値は「いくら使うか」で決まります。仮にイオン系のお店で月3万円使う家庭なら、年間36万円です。
- 100株(13万円):返金1% = 年3,600円 + 配当1,500円 = 5,100円 → 投資額に対して約3.9%
- 300株(39万円):返金3% = 年10,800円 + 配当4,500円 = 15,300円 → 約3.9%
- 1,500株(195万円):返金4% = 年14,400円 + 配当22,500円 = 36,900円 → 約1.9%
見えてくることが2つあります。ひとつは、株価が半値になったことで、100株・300株の実質利回りは4%近くまで戻ったこと。高値の2,877円で買っていれば同じ計算で1.8%ほどでしたから、優待株としての「お得さ」は2倍以上になりました。
もうひとつは、株数を増やしても利回りは上がらないこと。返金率が上がるより投資額の増え方のほうが大きいので、1,500株では2%を切ります。優待目的なら100〜300株が効率の良い範囲です。それ以上は「イオンという会社の成長に賭ける」投資になります。
なお、返金の対象はイオングループのお店での買い物に限られます。近くにイオンがない人にとっては、優待の価値はゼロです。この株が「誰にとってお得か」は、住んでいる場所でかなり変わります。
イオン株は買い時なのか
半値になったから買い時、とは言えません。上で見たとおり、1,300円でもPERは48倍あります。株価が「割安」になったのではなく、「極端に割高」から「かなり割高」に戻っただけ、という見方もできます。
一方で、優待株として見ると景色が変わります。100株13万円で年3,600円の返金と1,500円の配当。近所のイオンで日常的に買い物をする人にとっては、4%近い実質利回りは決して悪くない数字です。
整理すると、こうなります。
- 値上がり益を狙うなら、純利益が伸びる見通しが立つまで待つ理由があります。会社予想は+0.4%です。
- 優待と配当を受け取るなら、100〜300株の範囲で、自分の買い物金額から利回りを計算してから判断する対象です。
- どちらにしても、次の決算(10月の中間決算)で純利益の見通しがどう変わるかが最初の確認ポイントになります。
ETFで小売株をまとめて持つ選択肢
「イオンだけ持つのは不安だが、小売業には興味がある」という人には、小売株をまとめたETFがあります。
| ETF | イオンの比率 | 年初来 | 経費率 |
|---|---|---|---|
| NEXT FUNDS 小売(TOPIX-17)上場投信(1630) | 12.16%(2位) | -2.2% | 0.352% |
1630はイオンを1割強組み入れていますが、ファーストリテイリングや百貨店なども含むため、年初来では-2.2%にとどまりました。イオン単体の-47.5%と比べると、分散の効果がはっきり出ています。
ただし当然ながら、ETFにオーナーズカードは付いてきません。優待が目的ならETFでは代わりになりませんし、逆にイオンの回復に賭けたいなら1割の組入比率では物足りないでしょう。優待が欲しいなら現物100株、業種に広く乗りたいならETFと、目的で分けるのが筋です。
イオン株の株価チャートや配当の履歴は、ETFショッピングのイオンのページで確認できます。
よくある質問
Q. イオンの株価はなぜ下がっているのですか?
大きくは3つです。①営業利益は最高益でも、株主に届く純利益が今期ほぼ横ばいの予想だったこと。②高値時点のPERが100倍を超え、業績に対して株価が先に上がりすぎていたこと。③株式分割で優待目当ての買いが集中し、その反動が出たこと。業績が崩れたわけではなく、期待と株価の水準が修正された下げです。
Q. イオンの配当は減配になったのですか?
減配ではありません。分割前の20円は分割後の約6.7円にあたり、2027年2月期の予想は中間7.5円・期末7.5円の年15円(記念配当1円を含む)です。数字が小さく見えるのは分割のせいで、分割後の1株あたりで見れば増配です。
Q. オーナーズカードは100株でもらえますか?
もらえます。分割後は100株(2026年9月25日時点で約13万円)から対象で、返金率は1%です。3%以上の返金率が欲しい場合は300株以上が必要です。権利確定日は2月末と8月末の年2回です。
Q. 優待と配当を合わせた利回りはどのくらいですか?
買い物金額しだいです。イオン系で月3万円使う人なら、100株で年5,100円(返金3,600円+配当1,500円)、投資額13万円に対して約3.9%です。月1万円なら約2.1%まで下がります。ご自身の買い物額で計算し直すことをおすすめします。
Q. 新NISAでイオン株を買えますか?
成長投資枠で買えます。配当は非課税になりますが、オーナーズカードの返金はもともと課税対象の配当ではないので、NISAかどうかで優待の扱いは変わりません。
イオンの株価が半値になった理由は、業績の悪化ではなく「期待の大きさ」でした。皮肉なことに、その下落によって優待株としての利回りは高値時点の2倍以上になっています。値上がりを狙う株と、優待を受け取る株。同じイオン株でも、どちらとして持つかで答えは変わります。
※ 本記事は2026年9月時点の一般的な情報です。利回りや値動きは市場環境で変わります。投資判断はご自身の責任でお願いします。
