韓国株はなぜ急落した?「単一銘柄レバレッジETF」という新商品の暴走【2026年7月】
2026年7月、韓国株(KOSPI)が大きく下落しました。アジアの主要市場の中で韓国だけが突出して急落しており、7月だけで約20%、6月の高値からは約25%も下げる場面がありました。「何が起きているの?」と気になった方も多いはずです。
結論から言うと、犯人は5月に上場したばかりの「単一銘柄レバレッジETF」という新商品だと指摘されています。この記事では、その仕組みと「負の複利」という怖さ、そして日本株への影響までをわかりやすく整理します。

何が起きたのか
まず事実から。2026年7月の韓国市場では、サーキットブレーカーやサイドカー(急変時に取引を一時制限する仕組み)が何度も発動する荒れた展開が続きました。KOSPIの1日の値動きの幅(日中変動率)は、ある新商品の上場前後で平均2.86%から5.46%へと約1.9倍に拡大したという分析もあります。
同じ時期、日本や台湾の株もアジア全体で調整しましたが、韓国の下げ方は明らかに「異常」でした。その違いを生んだのが、次に説明する新しいETFです。
犯人は「単一銘柄レバレッジETF」
韓国では2026年5月27日、特定の1銘柄の値動きの2倍を狙う「単一銘柄レバレッジETF」16本が一斉に上場しました。対象はサムスン電子とSKハイニックス、つまり韓国を代表する半導体2社です。
単一銘柄レバレッジETFとは
・1つの銘柄の値動きの「2倍」を目指すETF
・株が10%上がれば約20%、10%下がれば約20%動く
・もともと指数(S&P500など)が対象だったレバレッジを、個別株1銘柄に適用した新商品
問題は、この2銘柄がKOSPI全体に占める比重が非常に大きいこと。そこに「2倍」のお金が殺到したため、たった数本のETFが市場全体を揺さぶる存在になってしまいました。
なぜ相場全体を揺らすのか
レバレッジETFには、「毎日、倍率を維持するために売買する」という宿命があります。これが値動きを増幅させます。
| 相場 | レバレッジETFの動き | 結果 |
|---|---|---|
| 株価が上がった日 | 2倍を保つためさらに買い増す | 上げを加速 |
| 株価が下がった日 | 2倍を保つためさらに売り増す | 下げを加速 |
つまり「上がればもっと買い、下がればもっと売る」という、相場を一方向に押し流す売買が毎日発生します。野村證券の分析では、市場が1%動くたびに約90億ドル規模のリバランス(調整売買)需要が生まれるとされます。下げ始めると売りが売りを呼ぶプログラム売りの連鎖になり、これがKOSPI急落の引き金になったと、複数の証券会社が指摘しています。
「負の複利」で株の何倍も下げた
個人投資家に深刻な打撃を与えたのが「負の複利」です。レバレッジETFは毎日リセットされるため、値動きが激しいと元の株より不利に、じわじわ目減りしていきます。実際の数字を見てください。
| 銘柄(5/27〜7/15) | 株価そのもの | レバレッジETF(平均) |
|---|---|---|
| サムスン電子 | −8.96% | −30.66% |
| SKハイニックス | −7.18% | −34.06% |
株そのものは1割も下げていないのに、レバレッジETFは3割以上も下落しました。上場時からほぼ半値になった商品もあり、Bloombergの報道によれば高値から60%超下げたものもあります。韓国では追加証拠金(追証)の発生した口座が100万を超えたとも伝えられ、被害が広がりました(中央日報日本語版)。
日本株にも飛び火する
「韓国の話でしょ?」と思うかもしれませんが、そうとも言い切れません。サムスン電子・SKハイニックスは世界のメモリ半導体の中心であり、その急変は日本のAI・半導体関連株にも波及します。実際、この時期はキオクシアなど日本の半導体株も大きく揺れました。
韓国発のボラティリティ(変動)がなぜ日本株に影響するのか、その構造は三井住友DSアセットマネジメントの解説やマネクリ(マネックス証券)の分析でも取り上げられています。半導体は世界でつながっているため、隣の市場の混乱は対岸の火事ではないのです。
投資家への教訓
この一件は、レバレッジETFの怖さを改めて教えてくれます。ポイントは2つです。
① レバレッジETFは「長期保有」に向かない。
負の複利により、持っているだけでじわじわ価値が減りやすい。あくまで短期の売買ツールであり、積立や長期投資の対象ではありません。
② 「2倍」の魅力の裏に、2倍以上のリスクがある。
上げも下げも増幅されるうえ、負の複利で「戻りにくい」。値動きの激しい相場ほど不利になります。
事態を重く見た韓国の金融当局(金融委員会)は、2026年7月16日に単一銘柄レバレッジ商品の新規上場を暫定的に停止し、最低証拠金を1,000万ウォンから3,000万ウォンへ引き上げる規制強化に踏み切りました。
まとめ
2026年7月の韓国株急落は、「単一銘柄レバレッジETF」という新商品が生んだ人災の側面が大きい出来事でした。毎日のリバランスが相場の変動を増幅し、負の複利が個人投資家の資産を大きく削りました。
レバレッジETFは「短期の道具」であって「長期の資産形成の相棒」ではない。これは日本の投資家にとっても他人事ではない教訓です。便利で刺激的な商品ほど、仕組みとリスクを理解してから触れることが大切です。
※ 本文の数値や市況は2026年7月時点の情報です。投資判断はご自身の責任でお願いします。本記事は特定の銘柄・商品の売買を推奨するものではありません。
