ETFの換金売りで7月に日本株は下がる?1.5兆円の正体とデータで見る本当のところ
毎年7月になると、投資メディアで「ETFの換金売り(償還売り)で日本株が下がる」という話をよく見かけます。今年も7月8日・10日のETF決算に向けて、約1.5兆円もの売り需要が発生するとの試算が話題になりました。
「じゃあ7月は日本株を買い控えたほうがいい?」と不安になった方もいるはずです。ですが結論から言うと、この"7月に下がる"というジンクスは、データ上の再現性がほとんどありません。この記事では、換金売りの仕組みと「本当のところ」を整理します。

そもそも「換金売り」とは?
まず仕組みから。ETF(上場投資信託)は、保有者に分配金を支払います。この分配金の原資となる現金を用意するために、ETFが保有している株式の一部を売って現金化する必要があります。これが「換金売り」です。
日本の主要なETF(日経225連動型など)は、決算・分配のタイミングが7月上旬に集中しています。そのため「7月に大きな売りが出る」という構図になり、2026年はその規模が約1.5兆円と試算されました。金額だけ見ると、たしかにインパクトがありそうに感じます。
では、本当に日本株は下がるのか?
ここが本題です。証券会社のストラテジストの分析によると、答えは「データ上、下がるという裏付けはない」というものです。
専門家の見方(要点)
・「7月上旬を境に日本株が下落する」というデータ上の裏付けはない
・6月の配当再投資が"株高要因"になっている形跡もない
・こうした季節性のジンクスは、基本的に再現性がほとんどない
つまり「1.5兆円の売り」という数字のインパクトと、実際の株価への影響は別物だということです。詳しい分析は野村證券ストラテジストの解説でも確認できます。

なぜ「下がる」と言われるのに下がりにくいのか
理由は3つあります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| ① 事前に織り込まれる | 市場は7月の換金売りを"みんな知っている"。予想できる売りは、事前に価格へ織り込まれてしまう |
| ② 売りは分散して執行 | 1.5兆円を一気に売るわけではなく、時間をかけて少しずつ売られるため、一日への影響は薄まる |
| ③ 買い手も存在する | その価格で買いたい投資家がいれば需給は吸収される。市場全体の力に比べれば限定的 |
「予想できる悪材料は悪材料になりにくい」というのは、相場の基本原則のひとつです。7月の換金売りは、まさにその典型例と言えます。
投資家はどう受け止めるべきか
では、この話を投資家はどう扱えばいいのでしょうか。ポイントは2つです。
① 季節性ジンクスで狼狽売りしない。
「7月だから危ない」と慌てて売ったり、買いを止めたりする根拠は乏しいということです。むしろジンクスに振り回されて売買を増やすほうが、コストや失敗のもとになります。
② 見るべきは需給ではなく中身。
短期の需給イベントより、企業の業績や金融政策といった"本質"のほうが、長期の株価を決めます。日本株そのものの見通しについてはなぜ今も日本株を買うべきなのかで構造的な変化を整理しています。
まとめ
7月の「ETF換金売り」は、仕組みとしては本物です。約1.5兆円という規模も事実です。ただし、それが日本株を確実に下げるという再現性のあるデータは存在しません。
「1.5兆円の売り」という見出しはインパクトがありますが、市場はそれを事前に織り込み、売りは分散して消化されます。数字の大きさに驚くのではなく、それが本当に価格を動かすのかを冷静に見る。こうした季節性の話題こそ、投資家の"落ち着き"が試される場面です。
なお、現在の日経平均の水準はYahoo!ファイナンスの日経平均株価ページで確認できます。
※ 本文の数値や市況は2026年7月時点の情報です。市場環境は変動します。投資判断はご自身の責任でお願いします。本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
