新NISAでも米国ETFの配当は10%引かれる?二重課税の仕組みと対策【2026年】
「新NISAは非課税だから、配当にも税金がかからない」。そう思って米国ETFを買った人が、証券口座の明細を見て戸惑うことがあります。分配金がきっちり1割減っているからです。
これは間違いでも手数料でもありません。米国で引かれた税金です。そしてNISAでは、この10%を取り戻す手段がありません。
ただ、だからといって「NISAは損」という話にはなりません。計算するとNISAのほうが有利です。この記事では実際の数字で確認したうえで、NISAの中身をどう選べば効率が上がるかまで整理します。
NISAの「非課税」は、日本の税金だけの話
米国株や米国ETFの配当には、2種類の税金がかかります。
ひとつは米国で引かれる10%です。本来は30%ですが、日米租税条約によって10%に軽減されています。もうひとつが日本で引かれる20.315%です。
NISAが非課税にしてくれるのは、このうち日本の20.315%だけです。米国の10%は、日本の制度では手が届きません。NISA口座であっても、米国の税務当局は関係なく源泉徴収していきます。
これは口座の種類の問題ではなく、米国の資産から配当を受け取る以上どうしようもない部分です。米国上場のETFでも、東証に上場している米国株ETFでも、米国株に投資する投資信託でも、ファンドが配当を受け取る時点で同じように引かれます。

配当10万円で、手取りはこう変わる
では実際にいくら違うのか。米国ETFから年10万円の配当を受け取ったケースで比べます。
| 口座 | 米国税 | 日本税 | 手取り | 実質税率 |
|---|---|---|---|---|
| NISA | 10,000円 | 0円 | 90,000円 | 10.0% |
| 特定口座(確定申告なし) | 10,000円 | 18,284円 | 71,716円 | 28.3% |
| 特定口座(外国税額控除あり) | 実質0円 | 18,284円 | 81,716円 | 18.3% |
結論から言えば、NISAがいちばん手取りが多いです。確定申告して外国税額控除をフルに使った特定口座と比べても、8,284円多く残ります。
「二重課税で損をする」と聞くと身構えますが、NISAで起きているのは二重課税ではありません。日本の税金がゼロなので、二重にはなっていないのです。ただ米国の10%だけが残る、というだけの話です。
NISAでは外国税額控除が使えない、二重課税調整も対象外
ここが多くの人がつまずくところです。
外国税額控除が使えない理由
外国税額控除は、日本で払った税金から外国で払った分を差し引く仕組みです。つまり日本の税金があって初めて成立します。
NISAは日本の税金がゼロです。差し引く相手がいないので、控除しようがありません。そもそもNISAの配当は非課税所得なので、確定申告に載せること自体ができません。
投資信託の「二重課税調整」もNISAは対象外
2020年から、国内の投資信託やETFには二重課税調整という仕組みが導入されました。ファンドが外国で払った税金を、分配金にかかる国内の税金から自動的に差し引いてくれる制度です。確定申告が要らないので便利な仕組みです。
ただしこれも、NISA口座は対象外です。理由は同じで、国内の税金が非課税なので二重課税が発生しておらず、調整するものがないからです。
つまり米国上場ETFでも東証の米国株ETFでも、NISAで持つかぎり米国の10%は戻ってきません。ここに差はありません。
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同じNISAでも、銘柄しだいで外国税は17倍違う
取り戻せないなら、次に考えるべきはそもそも引かれる額を小さくすることです。米国税は配当に対してかかるので、配当が多い銘柄ほど負担も大きくなります。
100万円分を1年持った場合に引かれる米国税を並べてみます。
| 銘柄 | 分配金利回り | 引かれる米国税 |
|---|---|---|
| JEPI | 7.87% | 約7,870円 |
| HDV | 5.04% | 約5,040円 |
| SCHD | 2.98% | 約2,980円 |
| VYM | 2.20% | 約2,200円 |
| VOO | 1.05% | 約1,050円 |
| QQQM | 0.45% | 約450円 |
高配当ほど手厚く引かれ、値上がり重視の銘柄ほど引かれません。値上がり益にはNISAの非課税がまるごと効くので、この差はそのまま効率の差になります。
よく「NISAには高配当ETFを入れるべき」と言われますが、税金の観点だけで見るとむしろ逆です。米国の高配当ETFは、NISAの非課税メリットを一番受けにくい組み合わせになります。
もちろん配当そのものが目的なら話は別です。定期的な現金収入という価値は、税率だけでは測れません。米国の高配当ETFの選び方はSCHDとVYMの比較で整理しています。
日本株の高配当ETFなら、外国税はゼロ
ここで見落とされがちな選択肢があります。日本株に投資するETFです。
投資先が日本国内なので、そもそも外国税が発生しません。NISAで持てば、配当にかかる税金は文字どおりゼロになります。米国ETFのように1割引かれることがありません。
たとえば1489(日経平均高配当株50)は分配金利回り2.64%で、NISAならこれがそのまま手元に残ります。利回り2.98%の米国SCHDは10%引かれるので、手取りベースでは2.68%相当。表面利回りの差ほどには開きません。
もちろん日本株だけに寄せるべきという話ではありません。通貨の分散という点では米国資産を持つ意味があります。ただ「配当を受け取る箱としてのNISA」という観点では、日本株ETFのほうが素直だということは知っておいて損がありません。
結論:NISAが不利なのではなく、中身で効率が変わる
整理すると、こうなります。
①NISAは米国ETFでも有利。使わない理由にはならない
米国の10%が残るとはいえ、手取りは特定口座より多くなります。外国税額控除をフルに使った場合と比べても、NISAのほうが上です。「取り戻せないから特定口座で」は、計算すると逆になります。
②値上がり重視の銘柄ほど、NISAの恩恵は大きい
値上がり益には米国税がかかりません。売却益が非課税になるNISAとは相性がよく、配当が少ない銘柄ほど「引かれる部分」が小さくなります。
③配当が欲しいなら、日本株ETFという手がある
外国税がかからないぶん、NISAの非課税をまるごと受けられます。米国の高配当ETFと組み合わせて、両方を持つのも現実的な選び方です。
なお、実際にいくら引かれるかは米国ETF配当金の税額シミュレーターで試算できます。特定口座で確定申告する場合の還付額は外国税額控除シミュレーターで確認できます。
よくある質問
Q. 東証の米国株ETFなら、二重課税調整で取り戻せませんか?
特定口座なら自動的に調整されますが、NISA口座は対象外です。国内の税金が非課税で二重課税が起きていないため、調整する対象がないという整理になっています。NISAで持つかぎり、米国上場でも東証上場でも結果は同じです。
Q. 分配金を出さない投資信託なら、米国税を避けられますか?
避けられません。ファンドが米国株の配当を受け取る時点で、すでに10%が引かれているためです。分配せずに再投資する仕組みは、日本の税金を先送りできる点では有利ですが、米国税は同じようにかかります。
Q. 値上がり益にも米国の税金はかかりますか?
かかりません。米国が課税するのは配当に対してで、売却益には課税されません。NISAなら日本の税金もゼロなので、値上がり益は完全に非課税になります。ここがNISAのいちばん大きな価値です。
Q. 特定口座で確定申告すれば、必ず10%戻ってきますか?
全額戻るとはかぎりません。外国税額控除には所得に応じた上限があり、その年の所得税・住民税の範囲内でしか控除できないためです。上の表の「外国税額控除あり」は全額控除できた場合の数字で、実際にはこれより少なくなることがあります。
NISAは「税金がゼロになる箱」ではなく、「日本の税金がゼロになる箱」です。この一点を押さえておくと、何を入れるかの判断が変わってきます。分配金の受け取り方まで含めて考えたい方は毎月分配の米国ETF比較もあわせてどうぞ。
※ 本記事は2026年8月時点の一般的な情報です。利回りや値動きは市場環境で変わります。投資判断はご自身の責任でお願いします。
